黒田泰蔵Collection展


「黒田泰蔵Collection展」が、東京・芝のt.galleryで開催されている。

kaki

「花器」

黒田氏は、1946年滋賀県生まれ。伊豆の松崎町に築窯し、ここ20年ほどは一貫して白磁の世界を追求している。

その場の空気さえ清廉なものに変えてしまいそうな無垢な白。時にかすかに、時に勢いを宿すロクロ目。薄く緊張感をはらむエッジ。その美しさと強さとを併せ持つ作品には、熱狂的ともいえるファンがついている。

同展も初日の2日には12時のオープン前に、5―6人の男性ファンが列を作っていた。中には遠く香港や広島から、仕事の日程を同展に合わせて、駆けつけた人もいたほどだ。

それほどまでに人々が黒田作品を求める理由の一つに、近年日本で新作展が開かれていないことがあげられる。もともと日本以上に海外で高く評価されてきた氏。日本だけでなく、海外で個展を開催することも少なくなかったが、ニューヨークの「YOSHII GALLERY」のエキシビションに選ばれ、定期的に個展を開催するようになってからは、それに向けたアートピースの制作に多くの力を傾けている。

syokki

「食器」

現在、日本国内で氏の作品を扱っているギャラリーやショップは、t.galleryを含め片手にも満たない。中でも食器類は人気が高いにもかかわらず、ほとんど作られていないのが現状だ。t.galleryの御手洗照子オーナーは、5年ほど前に、「もう食器は作らない」という氏の言葉を聞いたという。「それだけ作品に集中したいのだろう」と、氏の心中を理解しているが、ファンからは「もっと背の高いジャグがほしい」「クリーマーとジャグの間くらいの大きさのものがほしい」「手のない煎茶用のポットがほしい」などの声が、御手洗氏の元に届く。そんな声を機会を見つけて氏に伝えると、「気が向いた時に少し作ってくれる」のだそうだ。

同展では、オブジェや花器など御手洗氏のコレクションのほか、そんな稀少な食器類も、展示即売されている。10日まで開催。